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睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、無自覚のまま睡眠時に呼吸が複数回にわたって止まってしまう病気です。睡眠中のため症状に気づきにくく、検査・治療を受けていない患者さまが多いという現状があります。無呼吸による窒息死などはありませんが、身体には大きな負荷がかかっています。
日中の突発的な眠気により集中力が低下すると、重大な事故を招く恐れがあり、注意が必要です。他にも動脈硬化や心筋梗塞・高血圧症などの生活習慣病の発症リスクを高めるため、早期治療が大切です。

定義

日中の過度の眠気もしくは睡眠時無呼吸に起因する症候のいくつかを伴い、「無呼吸・低呼吸指数」(apnea hypopnea index; AHI※) が5以上。
※AHI:睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数

重症度分類

軽症:AHIが5以上15未満・中等症:5以上30未満・重症:30以上

頻度

30歳から60歳の男性の4%・女性の2%。日本では無症状約400万人有症状患者。

診断基準

7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸状態が30回以上起こる。
睡眠1時間あたりの無呼吸状態が5回以上続いている。

睡眠時無呼吸症候群の分類・病態

分類
閉塞性睡眠時無呼吸症候群

睡眠時に上気道(特に咽頭部)が閉塞し、努力呼吸はあるが、無呼吸となる。臨床面で問題になるのはほとんどがこのタイプです。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

脳疾患患者や心不全患者で呼吸中枢の機能異常により、呼吸筋への刺激が消失し無呼吸となります。努力呼吸はありません。

病態

繰り返される無呼吸、繰り返される低酸素血症→交感神経亢進・組織の酸化ストレス・全身の炎症→インスリン抵抗性・高血圧、糖尿病→血管内皮障害・心血管障害

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群の多くは、舌が気道を塞いでしまい空気が通らず、無呼吸・低呼吸の状態に陥りやすいからと言われております。首が短くて太い方、顎が小さい方などは特に気道が狭い構造となり、睡眠時無呼吸症候群のリスクがさらに高まるのです。
生活習慣が原因の場合は、その改善に取り組むと症状の改善・予防が期待できます。肥満による顎や首周りの脂肪、飲酒に伴うアルコールによる筋肉の弛緩などは、舌が気道を塞いでしまう原因になるので、生活習慣や食生活の改善をめざしましょう。

急性期のリスク・慢性期のリスク

急性期のリスク

いびき(無呼吸の間はいびきがとまり、その後あえぐような激しい呼吸や大きないびきで呼吸が再開するのが特徴)。日中の眠気・頻回の中途覚醒・夜間頻尿・起床時の頭痛・熟眠感の欠如・倦怠感・集中力や記憶力の低下・生産性低下・労働災害・交通事故が考えられます。SASの眠気は運転能力を低下させ、交通事故を引き起こす可能性があります。SASの重症度が増すにつれて発生率が増加し、重症SASは健常人の約7倍の発生率が報告されています。

慢性期のリスク

高血圧・糖尿病・心不全・心筋梗塞・脳梗塞・認知症・夜間突然死(致死性不整脈)。SASの約50%は高血圧を合併し、高血圧症例の約30%は治療の必要なSASを合併します。さらに、重症高血圧の80%に合併・耐糖能障害を約50%に合併し、糖尿病の30~40%は治療の必要なSASを合併します。
脳梗塞は健常人の3.3倍、夜間突然死は健常人の2.61倍のリスクがあります。

予後

AHIが20を超える群では有意に生存率が低く、8年後の生存率は63%にまで低下します。

診断

睡眠時に無呼吸を指摘された場合や、日中の眠気や起床時の頭痛などSAS症状がある場合には、早朝高血圧・治療抵抗性高血圧などがあればSASを疑い、簡易検査を自宅で行う必要があります。
簡易検査は、一晩を通じて呼吸の状態や血中の酸素状態などを測定し、睡眠呼吸障害(AHI)を評価します。この簡易検査でAHIが40以上であるとCPAP療法が保険適用となります。
AHIが40未満である場合には、1泊2日の入院で行う終夜睡眠ポリグラフ検査を行います。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)は脳波・筋電図・心電図・動脈血酸素飽和度などを同時記録し、睡眠中の睡眠の深さ・分断の有無・呼吸状態・酸素状態などを評価する検査で、AHIが20以上であればCPAP療法の保険適用となります。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

持続陽圧呼吸療法(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)

鼻マスクを着けて上気道に常に陽圧を加え、上気道の閉塞を防ぐ方法で治療を行います。世界的にも安全性が高く評価されており、SAS治療法として広く普及しています。健康保険でCPAP治療を行うには、毎月1回の外来受診が必要で、3割負担の方の場合は、負担額は毎月5,000円前後です。現在、国内に約60数万人、年に3~4万人増加しています。

未治療(閉塞状態)

CPAP治療

CPAP療法で大半の患者に降圧効果が見られ、OSASの高血圧新規発症も抑制されます。
CPAP群治療群は重症OSAS群に比べて、心血管イベントともに改善が期待できます。

ただし、眠気の乏しいOSA患者はアドヒアランスが悪く、CPAPによる降圧効果や心血管イベント抑制効果が少ない。

口腔内装置(マウスピース)

睡眠時無呼吸症候群の治療では、主にマウスピースを利用して症状の改善をめざします。マウスピースを装着すると下あごの位置を固定でき、気道が広がって呼吸しやすくなり、無呼吸の状態が矯正されていきます。マウスピースは健康保険を適用した製作も可能です。
CPAPが継続できない方、AHIの基準未満の方が対象となり、当院ではマウスピースを作製する歯科医院を紹介することが可能です。

外科的手術

咽頭扁桃(のどちんこの奥で通称アデノイド)が肥大している場合、手術により切除することが症状の改善につながるケースもあります。鼻詰まりがひどく、治療の妨げになると判断した場合は、同様に手術が必要です。

生活習慣の改善:減量・禁酒・禁煙・横向きに寝る

マスクやマウスピースを用いた睡眠時無呼吸症候群の治療に加えて、日々の生活習慣を見直すと、症状の改善に良い影響を与える期待が高まります。

減量 肥満体により、顎や首周りに脂肪が多いと、気道がふさがる状態になりやすいと言われております。
禁酒 アルコールには、筋肉を緩める作用があります。特に寝酒は、舌が気道側に下がる原因となり、浅い眠りや夜中の目覚め、無呼吸状態を引き起こします。
禁煙 喫煙による上気道の筋力低下や上気道炎は、気道の幅を狭くさせ、睡眠時は特に気道を通る空気の量が減少してしまいます。
横向きに寝る 仰向けの状態で寝ていると、舌が気道をふさぐ原因になり、無呼吸・低呼吸状態を引き起こしやすくなります。
新規治療法:上気道刺激(植え込み型)

舌下神経に刺激用電極を留置し、外肋間筋と内肋間筋の間に換気努力を検出する圧センサーを置き、鎖骨下に植え込んだ神経刺激装置に接続します。
換気が十分でないと感知すると舌下神経を刺激し、舌を突出させ上気道を広げます。

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